健康経営優良法人2024認定要件(中小規模法人)

健康経営優良法人(中小規模法人)の認定要件について、各認定項目の解説と申請後に不適合が多い項目について注意点を整理しました。

経営理念

 1、「経営者による健康宣言と社内外への発信」、「経営者自身の年1回の定期健診受診」
   ・2つとも必須
   ※経営者のメッセージである「健康宣言」をしていないという理由の不適合が多い
   ※経営者のやる気が従業員のやる気に関わるため重要となる

組織体制

 2、全事業場へ健康づくり担当者の設置
   ・全ての事業場に健康づくり担当者を設置していることが必須
   ・健康づくり担当者の役割は、健康経営施策の立案・実行支援や、経営者、産業医、保険者
    および外部専門家との適切な連携など、従業員の健康の保持・増進に関する取組を行うこと

 3、(求めに応じて)40歳以上従業員の健診データの保険者(協会けんぽ等)への提供
   ・必須項目
   ※不適合件数が多い

制度・施策実行

 4、健康経営の具体的な推進計画  
   ・自社の従業員の健康課題(健康増進、過重労働防止等)を把握する
    (健康診断、ストレスチェック、勤怠情報、従業員アンケート、健康経営アドバイザーなど
    外部専門家との打ち合わせから自社の健康課題を把握する)
   ・その課題に対して、具体的な計画や数値目標を設定している
    (労働時間の適正化、ワーク・ライフバランス・生活時間の確保、メンタルヘルス不調の予防
     、女性の健康課題への対応・コミュニケーションの促進など)
   ・計画を実行するにあたり実施主体と責任担当者を定めている
   ・目標の期限や達成スケジュールを定めている
   ※目標・計画の設定を評価する箇所であり、目標の達成状況は問わない
   ※必須項目。「具体的な推進計画」は不適合件数がとても多い項目。

 5、健康課題の把握
  ①定期健康診断受診率100% 
  ②受診勧奨(健診後の再検・精検の受診勧奨又はがん検診など任意健診を促す取組)
  ③50人未満の事業場におけるストレスチェック実施
  ※①~③のうち2つが満たせないと不適合となる。不適合が多い箇所。

 6、ヘルスリテラシーの向上
  ④管理職・従業員への健康保持増進に係る知識の教育機会の設定
  ・1年に1回の健康関連をテーマとした研修又は月に1回の情報提供が適合条件
  ・テーマは健康づくり、WLB、職場活性化、メンタルヘルス対策など
  ・情報提供は掲示物でなく全従業員個人向けに届くメールなどの方法で行うこと

 7、ワーク・ライフバランスの推進
  ⑤適切な働き方実現
  ・組織として仕事と家庭生活の両立に向けた環境づくりのための取組を継続的に行っていること
  ・時間外労働の縮減や有給休暇取得の促進等
  ・残業時間の把握は当然必要だが、この項目では「改善」まで行うことが求められる
  ・育児や介護との両立ができる職場環境、柔軟な制度、相談窓口の設置
  ・勤務間インターバル制度など
  ※「育児・介護と両立」は従業員への個別ニーズ聴取、管理職研修など、支援策の充実が重要となる

 8、職場活性化
  ⑥コミュニケ―ションの促進に向けた取組
  ・事業者が主体となって、1年度に1回以上、定期的に、全従業員向けに、
   部門内外のコミュニケーションを促進する取組を行っていること

 9、仕事と治療の両立支援
  ⑦従業員の病気の治療と仕事の両立支援に向けて、支援体制の整備等の対策を定めていること
  ・本人の状況を踏まえた働き方(勤務時間、勤務内容など)を策定できること
  ・組織(管理職)の意識改革や受け入れ体制や対応手順の整備など必要な措置を講じている等

 ※上記④~⑦のうち1項目以上を満たすことが必須。

 10、健康の保持増進

  ⑧保健指導(安衛法66条の7)の実施または特定保健指導の実施機会を提供

  ⑨食生活の改善を促す取り組み
  ・従業員の生活習慣病予防のため、食生活改善に向けた普及啓発等の取り組みを継続的に
   行っていること(食に関する情報提供はこの項目では評価されない)

  ⑩運動を促す取り組み
  ・事業者が主体となって、従業員の運動機会の増進に関与する取り組みを継続して行っていること
   (情報提供や研修はこの項目では評価されない)

  ⑪女性の健康保持増進
  ・女性特有の健康課題に対応する環境整備や、従業員が女性特有の健康課題に関する知識を得る
   ための取組を継続的に行っていること 
   ※⑪「女性従業員の健康課題への対応」は今後特に重要となる項目

  ⑫長時間労働者への対応
  ・長時間労働者が発生した場合に具体的な対応策を行っていることをもって適合となる
  ・管理職に対する経営者の面接指導、本人の業務負荷の見直しなど
  ・安衛法上の義務である、時間外休日労働が月80時間を超えた労働者で申し出を行った者への
   医師による面接指導を超えたもの

  ⑬メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み
  ・メンタルヘルスについての相談窓口を設置し、周知を行っている、または不調者が出た場合の
   支援体制の整備など、サポート体制や職場復帰支援策など予防策、対応策を事前に定めていること
   (メンタルヘルス研修は⑬では評価しない)
  ・従業員にとって安心・快適な職場環境の整備ついて管理職を評価・教育する仕組みがある
  ・ハラスメント相談窓口が設置され、従業員が相談しやすいものであるなど

  ⑭感染症予防に関する取り組み
  ・「感染症予防や感染拡大防止に向けた取組や制度」を実施していること、「新型コロナ流行を踏ま
   えた取組」を実施していることの2点で適合となる

  ⑮喫煙率低下に向けた取組
  ・従業員の喫煙率低下を促すため、喫煙者に対する禁煙促進に向けた取組の実施
  ・ルールの設置や従業員に対するたばこの健康影響についての教育・研修を実施していること

 ※上記⑧~⑮のうち4項目以上が必須
 ※ブライト500は上記①~⑮のうち13項目以上が必須

 11、受動喫煙対策
  ・必須項目
  ・受動喫煙防止のため、労働安全衛生法、健康増進法の趣旨に基づいて、受動喫煙防止に向けた
   対策が講じられていること

評価・改善

 12、評価・改善
  ・必須項目
  ・健康経営の取組を実施後、取組結果をもとに、生活習慣等の改善状況の把握や効果検証等を
   行っていること

法令遵守・リスクマネジメント

 13、法令遵守・リスクマネジメント
  ・必須項目
  ・安衛法第66条に基づき、健康診断を行っていること
  ・安衛法第66条の10に基づき、従業員50人以上の事業場においてストレスチェックを行っていること
  ・労働基準法または労働安全衛生法に係る違反により送検等されていないこと

※加えて、ブライト500は「健康経営の取組の外部への発信」も評価される

【参考】
健康経営の推進について 令和6年3月 (経済産業省)
健康・医療新産業協議会健康投資WG 事務局資料 令和5年12月 (経済産業省)
経済産業省健康経営優良法人2022 今年度の概要と主な変更点  (株式会社日本総合研究所)